2015/06/21

語りかける木


「庭を作ろう!」というタイトルの絵本を買った。
ある家族が庭付きの一軒家に引っ越し、荒れ果てた庭を
丁寧に再生していく、とっても温かいお話。
その庭には、樹齢100年くらいの大きな林檎の木があって、
家族が引っ越してくるまでは、ぽつんとそこにあるだけで、
誰からも見放された木。
その家族が丁寧に手入れをして、ある日その木の根元で寝ていた少年に
話しかける。その木が今まで見てきたことや、気持ちを。
そのお話を読んで思い出したこと。

このブログの頭にも載せてるのだけど、
2年前、Hammerssmithの駅からテムズ河に向かって散歩してた時、
車通りの激しい道路脇の緑地に
ひっそりと満開の花を咲かせる八重桜があった。
あまりにも美しくって、自然と心が惹かれて
写真に撮らなきゃって思って、シャッターを切ったことを覚えている。

後に日本に帰って、filmを現像して、何人かの友人にロンドンの写真を見せたんだけど
そのうちの二人が、
「この木、存在を気づいてもらって、とても喜んでる。とても寂しかったみたいね」
って言った。

私すごく嬉しかった。
こんなに目一杯、きれいな花を咲かせているこの木に、
日本からたまたま来ていた私が巡り会えたことに。

何十年もいろんなことを見てきたんだろうなって思った。
そして、一昔前の人たちの姿が浮かんできた。
どんな気持ちで植えたんだろうかって。
もう植えた人はきっとこの世にいないだろうなって思うと
その時間が風のように私に迫る感じがした。

けれど、その桜は静かに花びらを散らして、
また一年、また一年と、存在しているんだな。


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