サトルさんが、自分で作った平屋の模型を手にして、
「土壁の家を作るぞ、その辺りの子どもたちを集めて、皆で壁をパンチするんだ
土壁は空気を抜くことが大事だけな」
と熱のこもった調子で話していたのはかれこれ10数年も前の話だと思う。
私は当時、今よりももっと夢見る少女で、その話を聞くたびにワクワクしたものだ。
10数年して、サトルさんは初めて”夢の土地”を案内してくれた。
雨上がり、山土がぬかるむ日に、私はお気に入りの緑色の靴でこの場所を訪れたことを
やや後悔している。靴を洗うのはあまり好きな作業ではない。
杉の木がぎっしりそびえ立つ、日向の少ない小道。
螺旋状に続く小道を辿って行くと、
螺旋状に続く小道を辿って行くと、
空が高く開けた土地があった。
平屋を建てるであろう場所の周りを取り囲むように
柿の木やレモンの木、名前のわからない柑橘の木が植えられている。
サトルさんの現実的な説明を聞きながら、
もし自分がここで暮らすとしたらと想像すると、真っ先に熊のことが不安になった。
「ここは熊は出るか?」
サトルさんの現実的な説明を聞きながら、
もし自分がここで暮らすとしたらと想像すると、真っ先に熊のことが不安になった。
「ここは熊は出るか?」
「ここは出らせん」
けれど山は繋がっている。
街灯もなにもない山の中で、暗闇に人間が住む恐怖が私を襲う。
もし熊が出てきたら、私はその時、勝てるだろうか
何を武器に戦う?
フライパンで顔に一撃するのか
そんなことを考えていたら、山の奥に大好きな藤の花が見えた。
柔らかい藤色は、恐怖を一瞬にして持ち去って行った。
けれど山は繋がっている。
街灯もなにもない山の中で、暗闇に人間が住む恐怖が私を襲う。
もし熊が出てきたら、私はその時、勝てるだろうか
何を武器に戦う?
フライパンで顔に一撃するのか
そんなことを考えていたら、山の奥に大好きな藤の花が見えた。
柔らかい藤色は、恐怖を一瞬にして持ち去って行った。
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